2022年版 ネオ・キラキラプログラム
ネオ・キラキラプログラム(以下、ネオキラ)は、子どもが充実した人生を過せるように、子ども一人ひとりの人間力と多様な個を育む基盤となる集団を育てることをめざす心理教育プログラムです。
「教育カウンセリング心理学研究会」が作成し、計画・実施・検証を進めています。プログラムの実施及び共同研究を進めていただける方のご参加をお待ちしています。
1.ミーティングのご案内
教育カウンセリング心理学研究会に参加しませんか
本会では、月1回程度のミーティング、不定期の拡大例会、1年に1回程度のSGE宿泊研修会、その他の研修会および学会の参加などの活動を行っています。キラプロの計画・実施・検証のための研修だけでなく、参加者のニーズに合わせ、SGEの体験研修・アセスメントの事例分析・カウンセリングのロールプレイ演習・ブックレポート読書会など、さまざまな内容で研修会を実施しています。
日程はメールなどで、ご案内しています。開催場所は、主に北大阪の会議室です。ミーティングの詳細については、上記のリンクよりお問い合わせください。
年会費などは徴収していません。(会場費など実費をいただくことはあります。)
2.ネオ・キラキラプログラムの実施について
ネオ・キラは、子どもが充実した人生を過せるように、子ども一人ひとりの人間力と多様な個を育む基盤となる集団を育てることをめざす心理教育プログラムです。大人がよいと考える「型」を押し付けるのではなく、子どもたちと大人が理解しあい、ありたい自分やあるべき集団・社会を一緒に創造することをめざします。
実施の流れは、
①実施者が事前研修を受ける
②実施計画書を提出する
③個や集団のアセスメントを行って目標を定める
④プログラム開始
⑤実施途中に事例検討して軌道修正を図る
⑥事後のアセスメントと効果検証
と展開します。
教材と指導案を眺めるだけで実施することは、決してしないでください。
実施者は、事前に十分な研修を受けることを必須とします。ネオキラはできるだけ少ない回数での実施を想定しているため、内容が濃密で多彩だからです。簡単に見えても実施するには高い力量が必要です。またネオキラは、子どもたちに役立つことを目的に作成してきましたが、同時に、実施者の自己成長の機会だと捉えています。集団を対象に実施しますので、個を対象として実施する以上に実施者自身の内省に基づくリーダーシップが必要なので、それを培うための十分な量と質の継続した研鑽が求められます。
3.プログラムの実施要件について
ネオキラは、以下の点を約束できる方、或いは学校にのみ実施を許可します。
(1)ネオキラの学びの場に継続参加する
①ネオキラ研修を受ける 校内研修を開く
本プログラムは、既製品として受け取って決められたマニュアルに従って実施するものではなく、実践者が協働して創造することを意図しています。我流ではうまくできないので、少なくともキラプロ研修に参加し、プログラムの目的や構造を理解し、教材の流れを体験してください。本プログラムは、指導プランを読み込んで指定された教材を用いればある程度は進められるように、できる限り丁寧に作成することを心がけていますが、構成的グループエンカウンターをはじめとするそれぞれの取り組みは体験的な研修を受けてこそ、子どもたちの心に届く実践になります。
研修を受ける機会がない場合は、相談してください。スタッフから講師を選定し、校内研修を実施することも可能です。
②ミ-ティングに参加する・伝える・拡げる・改善する
できるかぎり月1回のミーティングに参加してください。学校や学年で実施する際は、少なくとも1人は研修とミーティングに参加することを要請します。1人、あるいは少数教員のみの参加の学年や学校は、キラプロ研修に参加して演習を積んだ教員がその周知を図る校内研修を実施してください。
本プログラムは2012年秋からミーティングを続けています。互いの実践を交流し、課題を語り合い、共に学ぶ仲間の集う場に参加してください。特に、実践者はミーティング参加前に、実践した箇所の改善点等を教えてください。改善策を検討し、指導案や教材を改定します。また、他の実践者や研究者の意見も取り入れて進めたいので、積極的に発表してください。
③授業見学・ビデオ検討会を実施する
少なくても年1回、学年や学校で実施する場合は、最低一人、キラプロ担当スタッフの授業見学を受ける。日程調整が難しい場合は録画したものを運営スタッフに送付し、ミーティング等を通じて検討し、運営スタッフがフィードバックする。
(2)計画的にアセスメントしてエビデンスを蓄積する 調査・研究に協力する
子どもたち自身が自己成長を感じられるように、又、子どもの指導・援助に生かして実施者の資質向上を図るために、さらに、プログラムの進化を図るために、実施前とプログラムの中間時点での形成的評価、事後評価を実施してください。
アセスメントは統計学的に妥当性や信頼性のあるものを使用し、個人対象のものとクラス集団対象のものを実施します。
ただ実施するのではなく、「何をめざし」「結果はこうだった」といったことを共有し、「今後はこうしてはどうだろう」と思考を深め、質の高い実践ができるように進化するための糧としましょう。そのために、質的な評価と量的な評価、自己評価や他者評価や相互評価等、多様な評価を実施してエビデンスを共有し、名人にしかできないプログラムではなく、学び続ければ多くの人が一定の高い質で実践できるプログラムにしていきましょう。そのための調査や研究に協力して下さい。
(3)実施に関する事前・事後報告を行う
実施者や実施学年・学校は、ネオキラ実施前に実施時期や対象学年・クラスを記載した実施計画を提出し、不明点等をその都度、連絡・相談してください。1回毎に報告に対し運営スタッフがフィードバックし、プログラムの修正を行います。
(4)研究もできる実践者、実践もできる研究者をめざす
本会は、会員全員が研究も実践もできることを目指しています。発表や文章にまとめることを「面倒くさい」と感じてしまうときがありますが、実践者として前進するために区切りをつけて先に進む」ことが大事だと考えています。各メンバーが所属する研究会や学会で、積極的に発表し、そこで得た意見を持ち返って検討することを心がけてください。
(5)実施教材と指導案の受け取り
本会が各実践者の進行状況を把握たり、プログラムの改善を進めるために、教材と指導案の一括配布はしません。まず、実践希望者は計画者を提出して下さい。全体計画と第3回までの教材と指導案を配布します。第1回目と第2回目の実施報告を受けて第4~6回目、第5回目の実施報告を受けて、第7回目以降の教材を配布します。
4.プログラムの内容
ネオキラは、週1回15分程度で実施します。構成的グループエンカウンターを軸とするプログラムと、ソーシャルスキル教育や実行機能を高めるプログラムで構成されています。
(1)実施時期と場所
週1回、15分程度で、朝の会や終わりの会、授業の残り時間等での実施を想定して作成しています。
基本的な実施場所は、教室で決められた席に座っていることを想定しています。指導プランに「隣の人とペアになって」となっていても、順番に席をずらせていくなどして相手を変えていき、色々なメンバーと交流する機会にように配慮してください。
ソーシャルスキル教育等の回は、実施後に般化の時間(復習と応用の時間)を設けることを推奨します。
(2)プログラムの順番
ネオキラは、順序性を踏まえて作成しているので、基本的には順番を変更しないで実施してください。集団づくりのエンカウンターの部分も、集団の成熟度に応じて、自他理解→自他受容→自己主張→それ以外の目的のエクササイズとなるように順序性を持たせています。中盤以降はクラスの状況に応じてエクササイズを入れ替えたり、他に推奨するエクササイズを用いても構いません。
(3)アセスメント(未定)と事例検討
当面の間、アセスメントは、子ども対象のアンケートによる評価、子ども自身の自己評価、教員評価、保護者評価等を組み合わせて評価するものとします。推奨する質問紙については当面はこれまでのものを用いて下さい。
アセスメントによってクラスの気になる点や、気になる子どもの状況を明らかにし、研究会を中心に事例検討して方策を検討し、その結果を受けて実施方法等を修正します。
その中で、子ども全員が基本プランを体験しますが、ソーシャルスキル教育等の回は事後アンケートを実施し、わかりにくかったと感じた子どもには別途、教える時間を取ったり、宿題を出したり、家庭で般化の練習をお手伝いしてもらうといった対応を追加します。
5.構成的グループエンカウンターのポイント
構成的グループエンカウンターは、人間関係を築く練習の課題となるエクササイズと、気持ちを語り合うシェアリングが柱となっています。
(1)目的を明らかにしよう
エンカウンターには、自己理解、自己受容、自己表現・自己主張、感受性、信頼体験、役割遂行の6つの目的があります。プログラムには各エクササイズの目的を記載してありますが、自分の言葉ではっきりとさせることが成功の早道です。
(2)基本的な流れ
構成的グループエンカウンターは、インストラクション(導入:目的や方法、留意点等を簡潔に説明する)→エクササイズ(展開:目的にそった課題に取り組む)→シェアリング(まとめ:エクサイズを体験した気持ちを自己開示して分かち合う)と進みます。
(3)シェアリング(気持ちの交流)について
気持ちを交流することが人間関係を築く上で重要なので、人間関係づくりや自己理解を深めるエクササイズを実施したあとに、気持ちを語り合うシェアリングを実施します。
導入時に教員が、子どもたちのモデルになる自己開示の例を示してください。
一般的な発問は「今のエクササイズを体験して、今、どんな気持ちですか?楽しかった・恥ずかしかった・腹が立ったといった気持ちを言った後で、その理由を言ってください。」となります。
初期の全体でのシェアリングは、教員と子どもの交流が中心になります。一人が発言したら、ペアのエクササイズならばもう一人にも聴くなどしてひろげていきます。
集団づくりが進むと、教員が初めに一度「手を挙げて名前を言って、話したいことをどんどん話してください」と促すと、教員がつながないでも次々に手が上がってシェアリングが進むようになります。
(4)グループサイズについて
初期は2人組を基本とします。ペアで交流することに慣れた段階で4人組、8人組と大きなグループで実施するエクササイズをします。ただし、このプログラムは10~15分の短時間での実施を想定していますので、グループサイズを大きくすると参加度が低くなるようでしたら、無理に大グループにしなくてもかまいません。
(5)介入について
みんなが気持ちよく暮らしていけるための人間関係づくりです。事前の約束に違えるような言動があった場合は、ためらわずに介入します。
ただし、威嚇的な介入を行うと該当の子どもだけでなく、集団全体が委縮することがありますので、できる限り禁止命令ではなく、話し合うことで解決を目指します。
(6)実施時間について
年間通じて人間関係づくりを進めるべく短時間での実施としていますが、時間があるときは、エクササイズやシェアリングの時間を延ばして実施してください。広がりや深まりが生まれます。保健室や適応指導教室、支援教育で用いる際も時間を多めにとって実施するとよいでしょう。
6.ソーシャルスキル教育や実行機能を高めるプログラムのポイント
ソーシャルスキル教育や実行機能を高めるプログラムのポイントは、子どもたちの生活に即した役立つスキルを定着させていくことです。
(1)目的を明らかにしよう
エンカウンターと同様、教員が今日のプログラムの目的がはっきりしていてこそ、プログラムが効果のあるものになります。そして、「今日のプログラムは、前後の回とどう関連しているか」を意識なさると、さらに質が高まります。
(2)教室の仲間と一緒に高め合う
このプログラムは教室で実施することを想定しています。個別のアセスメントが実施できなくても人と関わる際に必要な考え方やスキルを包括的に取り扱っていますので、不足している部分をお互いに補いながら資質を高めることをねらっています。
対人行動の基本的な流れは、①相手の反応を解読する、②対人目標と対人反応を決める、③感情を統制する、④対人反応を実行する、となっています。このプログラムはこの流れを踏まえて作成しています。
(3)基本的な流れを押さえておこう
①インストラクション(教示:今から学ぶことの意義を伝える)→②モデリング(よいモデルを抽出して明らかにし、それをやってみせる)→③リハーサル(よいモデルを練習する)→④フィードバック(練習の成果を肯定的に評価する・修正する」→⑤般化(もっと練習する)、が基本の流れとなります。
(4)大人の押し付けではなく、子どもたちの生活に即した役立つスキルの定着を図る
大人の考えるスキルと実際に子どもが考える生活に即した望ましいスキルは、重なることもありますが異なることもあります。このプログラムは子どもたちがお互いの学校生活を気持ちよく過ごせるようにするものですから、良いスキルのモデルを抽出するときは、子どもたちに幅広く尋ねるようにして、大人から「これがよいやり方だね」と押しつけないようにしましょう。みんなで話し合いながらまとめていくプロセス自体が、よい集団に成長することに貢献します。
(5)必ず事前に練習をしよう
授業時間内での実施を想定して指導プランは作成していますが、ぶっつけ本番ではうまくできないことがあると思います。少人数の同僚とインストラクションとモデリング、それとできればフィードバックの部分だけでも練習しましょう。本番では子どもたちが意外な発言をすることが普通ですが、事前練習の際にシミュレーションができていると対応力が増します。
(6)すべての教材を使うか
教材は、色々なクラスを想定して作成しています。ビデオを見せなくても先生自身が演じることができたり教室の子どもたちを使ってロールプレイができることがあるでしょうし、ピクチャーカードも子どもたちに作ってもらうことができるかもしれません。また、少ない例でじっくりやったほうが分かりやすいことがあるかもしれませんので、すべての教材を必ず使わないといけないわけではありません。
逆に、もっと複雑なスキルに取り組むために新たな教材を追加することがあっても構いません。
(7)保護者の協力を得よう
このプログラムは1回やっただけで、クラス全員がずっとでき続けるようになるわけではありません。繰り返し、練習することが必要です。プログラム開始前から保護会で趣旨説明し、具体的な進行状況を学級通信等で周知を図り、家庭でスキルの般化を促す宿題を一緒に取り組んでもらえるように呼びかけましょう。
(8)多面的に成長をとらえよう
このプログラムに取り組んで成長したことや課題がわかるようにアセスメントしましょう。そのとき、子どもの自己評価だけではなく、子ども同士の相互評価や保護者や教員の他者評価等、複数の方法でとらえるようにしましょう。そして、結果はポートフォリオ等に綴じておくように指導しましょう。